
【パリ時事】スペイン内戦(1936~39年)で反乱軍を率いて勝利し、独裁体制を築いたフランコ総統が75年11月に82歳で死去してから20日で半世紀が経過した。大多数の国民は独裁後の民主化を謳歌(おうか)しているが、極右政党ボックス(VOX)の支持者らはフランコ時代への郷愁を隠さない。サンチェス首相は、「貧しく孤立した国」に逆戻りしかねない動きとみて、危機感を強めている。
反乱軍はドイツとイタリアのファシズム勢力の支援を受け、内戦で共和国政府を打倒。独裁体制では女性が男性の許可なしに銀行口座を開けず、政治的弾圧も横行した。しかし、フランコ総統の死去後に即位したフアン・カルロス前国王は民主化を推進し、78年に現行憲法が施行。スペインは86年に欧州連合(EU)の前身・欧州共同体(EC)に加盟し、経済発展の道を歩んできた。
先月実施された世論調査で、現在の民主制が独裁より「はるかに良い」「良い」との回答は計74.6%に上った。一方、VOX支持者は計61.7%がフランコ独裁を「良かった」「非常に良かった」とし、全く異なる評価を下している。
VOXは2013年結成の新興政党。反移民、反フェミニズム、気候変動懐疑論などの主張で知られ、19年の総選挙で下院第3党に躍進した。社会の急激な変化を懸念する保守層の有権者らに支持されている。
VOXはフランコ体制について「暗黒時代ではなく、国民統合に向けた再建、進歩、和解」の時期だったと擁護。当時を美化した情報がSNSで拡散され、実態を知らない若者が好意的に受け止めているという指摘もある。
サンチェス氏は地元メディアへの寄稿で、現在の繁栄は国民による不断の努力で実現した「奇跡のようなもの」だと強調。その上で「一部の者が権威主義体制を理想化し、存在しない過去への郷愁にしがみつく今こそ、自由を守るために立ち上がらねばならない」と訴えた。
【時事通信社】
〔写真説明〕スペインのフランコ総統(左)とフアン・カルロス前国王(当時は即位前)=1975年10月、マドリード(AFP時事)
2025年11月22日 07時15分