
【ソウル時事】教科書には海外英語論文、医大には日本語文献を閲覧できる部屋も―。北朝鮮の内情に詳しい韓国・延世大病院の関係者は6日までに、金正恩朝鮮労働党総書記の肝煎りで「医療先進化」を目指し、積極的に海外の知見を吸収しようとしている北朝鮮の現状を明らかにした。
朝鮮中央通信によると、北朝鮮は党創建80年の昨年を「保健革命元年」と銘打ち、10月には先進医療拠点となる平壌総合病院が完工。正恩氏は完工式で「保健能力の建設は、人民の生命・安全を戦争の脅威から守る国家防衛力の建設と同様の重大問題だ」と強調していた。
同病院は党創立記念塔の目の前にある。関係者は、医療システムが崩壊した1990年代後半の経済難「苦難の行軍」を克服したことを誇示し、「人民中心の政治を宣伝する象徴だ」と説明。正恩氏が医療改革を自身の業績にしようとしていると指摘する。
北朝鮮は2024年、毎年全国20カ所に工場などを建設し、10年かけて地方振興を図る「20×10政策」を発表。25年には工場だけでなく、平安北道や西部・南浦などで病院が完成した。正恩氏は26年から本格的に毎年20病院を建設する考えを示しており、関係者は、中国製のほかドイツ製、米国製の医療機材が導入されていると語った。「人道目的」の名目で国連安保理制裁を免れているもようだ。
正恩氏は「最新の医療技術を不断に習得せよ」とハッパを掛け、海外の医療機関との共同研究も検討するよう指示している。関係者によると、最近は平壌医大などが英語教育を重視しており、医学の教科書や解説書では、かつてはほとんど載らなかった海外の英語論文が多数引用され、医学用語も英語をそのまま使うケースが増えている。医大のコンピューター室では、多数の日本語文献が閲覧可能。医療関係者が海外に出る機会があると、インターネットで論文を大量にダウンロードして持ち帰るという。
ただ、現状では「物質・技術的に最も劣っている部門が病院」(正恩氏)。医療機器に加えアルコール、麻酔薬といった物資も足りず、地方では電力不足が深刻だ。医療格差が大きいのが実態で、富裕層では高額のインプラント治療が盛んな半面、庶民は虫歯になると抜歯するしかないという。
【時事通信社】
〔写真説明〕昨年11月に開院した平壌総合病院(朝鮮通信・時事)
〔写真説明〕昨年12月に完成した南浦市の病院を視察する金正恩朝鮮労働党総書記(朝鮮通信・時事)
〔写真説明〕昨年10月に完工した平壌総合病院(朝鮮通信・時事)
2026年07月06日 14時35分