原発事故被害の史跡から彩色壁画=立ち入り制限緩和後に発見―福島・双葉町



福島県双葉町にある史跡「清戸迫横穴墓群」で、新たな彩色壁画が見つかったと同町教育委員会が12日、発表した。同史跡は東京電力福島第1原発事故の影響で帰還困難区域となり、保存や調査が中断されていたが、2022年に立ち入り規制が一部緩和されたことを受け、昨年から再開された調査で新たな壁画が見つかった。

舘下明夫教育長は同日の記者会見で「発見は、復興の後押しにつながる」と力を込めた。

同史跡は6世紀末~7世紀前半ごろに作られた東日本最大の横穴墓群で、約38万平方メートルに304基の横穴墓が確認されている。被葬者は地元の有力者らとみられ、1967年には、酸化鉄を含む赤色の顔料を用いて騎馬や人などを描いた彩色壁画が見つかっている。

新たに彩色壁画が見つかったのは、同史跡の中でも最大級の横穴墓(奥行き約3.7メートル、幅約3.6メートル、高さ約2.5メートル)内で、壁面に騎馬や人物のほか、大刀(たち)や盾などの武具、船などが赤い顔料で描かれていた。

調査に協力した茨城大の田中裕教授によると、武具や船などが描かれるのは関東地方以西の横穴墓などでみられる特徴だといい、「関東と東北両地方の文化的交流の証拠となる希少な例だ」と説明した。

教委は来年度、専門家らによる委員会を設置し、さらなる調査計画や保存方法などを検討する方針。舘下教育長は「横穴墓の中にはまだ帰還困難区域内にあり、調査が進められないものも多くある。国と調整を重ね、町の復興とともに解明を進めたい」と話した。

〔写真説明〕東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域指定が解除された後の調査で新たに見つかった清戸迫横穴墓群(福島県双葉町)の彩色壁画の一部。右から順に大刀(たち)、靭(ゆぎ=矢を入れる筒)、盾2枚が描かれている(顔料の色を強調するため加工。同町教育委員会提供) 〔写真説明〕東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域指定が解除された後の調査で、新たに彩色壁画が見つかった「清戸迫横穴墓群」の横穴墓内部=福島県双葉町(双葉町教育委員会提供)

2025年12月12日 19時41分


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