【北京時事】中国政府は今月、科学技術分野における若い高度人材の招致を目的としたビザ(査証)を新設した。外国人の門戸を狭めるトランプ米政権の逆を行く「開放的な中国」をアピール。優秀な人材を引き込み競争力を高めることも狙う。しかし、中国で就職難に苦しむ若者らは激しく反発している。
1日付で新たに設けられたKビザは理工系の知識を持つ外国人が対象だ。有名大学の学位を持っていることなどが条件で、雇用主や受け入れ機関の招聘(しょうへい)がなくても応募可能。取得すれば、中国で起業や教育、研究活動に従事できるとしている。
トランプ政権は9月、高度な技能を持つ外国人労働者向けのビザ申請手数料を10万ドル(約1500万円)に引き上げると決定した。中国共産党機関紙の人民日報(電子版)は「一部の国が国際人材を締め出す中、中国は時宜にかなった政策を導入した。わが国の将来の発展に大きな影響を与えるだろう」と論評した。
中国の在外公館やビザセンターは具体的な募集要項を公表していないもようで、Kビザ取得の詳細な条件は不明だ。ただ、申請のハードルは低いとみられ、インターネット上では「仕事を奪われる」「国内の就業問題を先に解決すべきだ」との声が上がっている。
中国国家統計局によると、学生を除く都市部における16~24歳の8月の失業率は18.9%に上る。景気減速が続き、大学を卒業しても職を得られない若者が増える中、自国民より外国人を優先するような政策に批判の矛先が向かっている。
また、「外国人が大量に流入し、治安が悪化する」といった臆測や「移民反対」を訴える投稿もネットで目立つ。中国在住の外国人は約100万人とされ、全人口の0.1%に満たない。「移民国家」である米国や、約400万人の外国人が暮らす日本に比べても極端に少なく、国外からの人の流れには敏感だ。
著名論客の胡錫進氏はSNSで「市民の疑念を払拭しなければ、(移民を受け入れるべきかどうかという)問題は長期にわたって社会に潜在し続けるだろう」と指摘。政府による「根気強い説明」が必要だと訴えた。
【時事通信社】
〔写真説明〕中国湖北省で企業説明会に詰め掛ける人々=2月6日、宜昌市(AFP時事)
2025年10月14日 08時28分