混迷打開へ年金改革見直し=マクロン政権が検討―フランス



【パリ時事】フランス政治の混迷打開に向け、マクロン政権が定年延長を柱とする年金改革の見直しを検討している。改革は2023年に強行されたが、「長く働きたくない」「議論なしで決められた」と国民に不人気で、中道左派の社会党は施行停止を主張。12日に発足した第2次ルコルニュ内閣は、不信任決議案が可決されないようにするために同党の協力を必要としており、マクロン大統領が重い腰を上げた形だ。

年金改革は法定の退職年齢を62歳から64歳に段階的に引き上げるのが主な内容。財政健全化が狙いで、マクロン政権を代表する経済政策だ。23年に当時のボルヌ内閣は憲法の特例規定を行使し、下院での議決を回避して法案を強行採択した。

わずか2歳の延長だが、労組は100万人規模のデモを行い、繰り返し抗議。24年の総選挙では社会党など左派4党が改革廃止を公約に掲げ、マクロン氏の中道連合を抑え下院の最大勢力に躍進した。

左派は過半数に届かず、マクロン氏は24年9月に中道と保守・共和党の少数連立与党体制でバルニエ内閣を誕生させた。しかし、政権打倒を目指す極右が倒閣で左派に加勢。下院は2カ月半後に不信任決議を可決し、内閣は総辞職した。後継のバイル内閣も今年9月に信任投票が否決され、退陣に追い込まれた。

今月5日に発足した第1次ルコルニュ内閣は閣僚の大半がバイル内閣とほぼ同じ顔ぶれだったため強い批判を受け、翌6日に総辞職する異常事態に。政治危機の深まりを受け、年金改革の政府責任者だったボルヌ元首相が「国の安定のため、改革停止を検討すべきだ」と、ようやく左派に歩み寄る姿勢を見せた。

ルモンド紙によると、マクロン氏は与野党幹部との10日の会談で、退職年齢の段階的引き上げを26年は見合わせ、27年の大統領選後に再開する提案を行った。年金改革の行方は次期大統領に委ねるというわけだ。これに対し社会党は、あくまで改革の「即時・完全な停止」を要求。新内閣が拒むなら「信任しない」と圧力を強める。

中道連合では、政権を挙げて実現した年金改革がなし崩しになりかねないとの警戒感も広がっている。与党の一角を占める政党「地平線」は改革停止に断固反対で、連合離脱までちらつかせてけん制した。共和党も与党との連立を解消。マクロン氏の求心力低下で「政権は末期症状」(仏テレビ)とされ、各陣営の受け入れ可能な妥協案が見つかるかは不透明だ。

【時事通信社】 〔写真説明〕フランスのマクロン大統領=9日、パリ(AFP時事)

2025年10月14日 07時07分


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