連帯と支援の声、力に=戦時下の国・地域も魅力発信―大阪・関西万博



大阪・関西万博には、158の国・地域や7国際機関が参加し、独自の文化や伝統、価値観で来場者らに魅力を発信した。パレスチナ自治区ガザでの戦闘やロシアによるウクライナ侵攻、スーダンの内戦に見舞われる参加国・地域の関係者は、多くの来場者の連帯と支援の声を力に、「各国が結束する場になった」と笑顔を見せた。

駐日パレスチナ常駐総代表部のシアム大使は今回の万博について「(さまざまな)国々や文化、考えが政治を超えて出会う場をつくり出した」と強調した。パレスチナ館では伝統工芸品を展示し、ナショナルデーでは民族衣装のファッションショーを行った。

来場者の中にはパレスチナやガザの状況を学ぼうとする人も多かったという。シアム氏は「世界の安定は理解から始まり、理解は人と人との交流から始まると思い出させてくれる」と語った。

パレスチナ館は展示でガザでの戦闘に触れないなど、政治色を排除。一方で、イスラエル館の展示内容にパレスチナ側が反発したり、会場周辺でガザを巡りイスラエルに抗議する人が現れたり、対立は万博会場にも影を落とした。パレスチナ館では開幕当初、「イスラエル占領下の規制」(シアム氏)により展示物の到着が間に合わないことを伝えるパネルを設置していたが、日本国際博覧会協会が撤去を要請。同氏は「真実は決して検閲されるべきではない」と残念がった。

ウクライナ館は「非売品」というテーマで、戦時下でも自由や権利を守るために、ウクライナ人が大切にしている価値観を映像で表現。イリナ館長は「来場者から応援の言葉や折り鶴、お菓子などプレゼントを数多くもらった。温かい思い出がたくさん残った」と喜んだ。

ナショナルデーでは、万博のために作られた「感謝の賛歌」を披露するなど、ウクライナを支援する各国への感謝を表現することに注力した。イリナ氏は「非常に多くの国々が合同イベントを開催したり、ウクライナ国旗を掲揚したりした。連帯を感じ、とても心強かった」と語った。

スーダン館のプロジェクト調整役、エルハジ氏は「万博は国々が集い結束する素晴らしい場だ」とほほ笑んだ。スーダン館は民族衣装や手工芸品などの文化発信だけでなく、豊富な水や鉱物資源をアピールし、投資の呼び込みも行った。

スーダンでは2023年4月以降、正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」による内戦が続く。「戦争がここまで長引くとは思っていなかった」と語るエルハジ氏は「歴史と文化、機会に富んだ真のスーダンを世界に示したかった。私たちのパビリオンは団結の象徴だ」と強調した。

【時事通信社】 〔写真説明〕大阪・関西万博のパレスチナ館の伝統工芸品に関する展示=13日午後、大阪市此花区 〔写真説明〕大阪・関西万博のパレスチナ館で展示された陶磁器などの伝統工芸品=13日午後、大阪市此花区 〔写真説明〕大阪・関西万博のウクライナ館で取材に応じるイリナ館長=13日午後、大阪市此花区 〔写真説明〕大阪・関西万博で、スーダン館のプロジェクト調整役を務めたエルハジ氏=11日、大阪市此花区

2025年10月14日 07時06分


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