大阪市淀川区の阪急十三駅前の飲食店主らが、土地所有者から賃料を3倍近く増額すると通知されていることが17日、分かった。付近では失火とみられる火災も2度起きており、店主らは不安を募らせている。
十三駅経由で大阪駅と新大阪駅をつなぐ連絡線整備構想の影響で、駅東口周辺では近年、大型分譲マンション建設などの再開発が進む。2023年6月、同市東住吉区の不動産会社が約30棟の飲食店や住宅がひしめき合う400坪超の土地を購入。間もなく飲食店主や住民らに賃料の増額請求通知書が届き始めた。
飲食店経営の男性は十数万円から3倍近い値上げを通知された。24年12月に土地が淀川区の不動産会社に転売された後も方針は変わらず、男性が元の金額で払い続けたところ、滞納分として数百万円を請求された。男性は「法外な金額で困っている」と話す。
別の男性も値上げに応じず、今年4月に滞納分として百数十万円を請求された。借地借家法は、賃料が近隣の類似物件と比較して不相当となった場合などに値上げを請求できると規定。借り主は拒否した上で、相当と認める金額を払えば不払いと見なされない。ただし、協議や調停を経て、裁判で貸主側の請求内容が認められれば、不足分の支払い義務が発生する場合もある。
店主らの不安は他にもある。この一角で失火とみられる火災がここ2年間に2回起き、計十数棟が燃えた。23年10月31日夜の火災は立ち飲み屋で布巾を煮沸していた鍋の放置が、今年7月6日早朝の火災は居酒屋で従業員が天ぷら鍋に火をかけたまま居眠りをしていたことがそれぞれ原因とみられる。
延焼被害を受けた飲食店経営の女性は、「こんな理不尽なことはない」と肩を落とす。
賃料の値上げなどに関し、東住吉区の不動産会社は「コメントは差し控える」と回答。淀川区の不動産会社代表は「60年前から賃料が変わっておらず、請求金額は適正と思う。時間をかけて一人一人対応していく」と説明した。
【時事通信社】
〔写真説明〕十三駅前で起きた火災の現場=7月22日、大阪市淀川区
2025年10月18日 08時06分