津波避難、なお残る課題=支援アプリ、使用者少なく―被災3県、道路の渋滞も・東日本大震災15年



昨年7月にロシア・カムチャツカ半島付近で、同12月に青森県東方沖で発生した地震で、東北沿岸には津波警報や注意報が相次いで出された。東日本大震災の教訓を踏まえ、岩手、宮城、福島各県の住民はいち早く避難したが、同時に複数の課題も浮き彫りになった。

2011年の震災では、膨大な数の避難者が出たことで、避難所運営や支援物資支給などに支障が出た。宮城県はこれを教訓に、マイナカードを活用したスマートフォンのデジタル身分証アプリを使い、避難者数などを把握する仕組みづくりを進めている。

アプリは24年秋に提供が始まり、今月6日までに110万人以上がダウンロードした。指定避難所でQRコードを読み込んで本人確認をすると、県や市町村はマイナカードに紐付いた避難者情報を瞬時に把握できる。

県によると、提供開始後初の津波警報が出たカムチャツカ地震の際は最大1万3000人が避難。しかし、避難所でアプリを使ったのは南三陸町で避難した2人のみだった。村井嘉浩知事はアプリを使うほどの大規模な避難状況ではなかったとしつつ、「そうしたときに訓練を兼ねて使ってもらうのは重要だ」と強調する。

普及を図る県は市町と連携し、避難訓練の参加者にアプリを使ってもらう取り組みに力を入れており、24年度に5市町、25年度に15市町と実施した。避難訓練では、アプリでの受け付けにかかる時間は手書きよりはるかに早く、数秒で完了。アプリを利用した住民は「簡単だった」と口をそろえるが、高齢者への普及が課題となりそうだ。

25年9月、女川町の避難訓練に参加した女性(84)は避難所で県職員の説明を受けながらアプリで受け付けを済ませた後、「とても簡単だったが毎回、説明を受けないとできなさそう」と感想を漏らした。町内で行政区長を務める男性(79)は「覚えれば簡単だが、スマホを持たない高齢者も多い。若い人のようには使いこなせない」と指摘する。県担当者は「訓練を通じ地道に広めるしかない」と説明する。

昨年の二つの地震では、車で避難する際の課題も浮き彫りになった。岩手県は23年度、市町村に自動車避難に関する考え方を示していたが、カムチャツカ半島や青森県沖での地震では、渋滞が発生した。県は「自動車避難のルールの策定と周知が必要と認識した」(担当者)として、沿岸自治体と協議を重ねる。

福島県では、東京電力福島第1原発事故後、行政機能の本格化や住民の帰還に時間がかかった影響が今も残る。担当者は、地震などによる避難時の誘導方法や場所の選定に関し、近隣自治体や関係機関の間で「スムーズに情報共有できる関係づくりが十分ではないことなどが課題」と指摘。県が中心となり、原発の周辺自治体や関係機関と災害発生時の避難対応を改めて確認する考えを示した。

【時事通信社】 〔写真説明〕避難訓練で、宮城県が普及を進めるアプリを使って避難者受け付けを行う住民(右から2人目)=2025年11月、宮城県石巻市 〔写真説明〕避難訓練で、宮城県が普及を進めるアプリを使って避難者受け付けを行う住民=2025年11月、宮城県石巻市

2026年03月12日 07時10分


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