【ベルリン時事】ドイツで、人工知能(AI)技術を用いて高度なデータ分析を行う米企業のソフトを警察に導入する計画が物議を醸している。自国の利益を最優先するトランプ米政権への不信感から、秘匿性の高い情報が米側に漏えいすることへの懸念が噴出。安全保障や諜報(ちょうほう)活動の米国依存脱却が課題となる中、「デジタル依存をさらに高めることはばかげている」(独誌シュピーゲル)と導入に反対する声が上がっている。
このソフトは米企業パランティア・テクノロジーズの主力ソフト「ゴッサム」。大量の情報を関連付ける技術に優れ、米国では連邦捜査局(FBI)をはじめ治安当局で幅広く活用されている。ドイツでも先行導入を決めた州警察から「捜査員が何週間もかかる作業を数分で処理できる」と評価され、内務省が全国導入を検討している。
パランティア社の共同創業者ピーター・ティール氏は、ドイツ生まれ米国育ちの起業家。民主主義に懐疑的な自由至上主義者として知られ、トランプ政権に近いとみられている。独与党の中道左派、社会民主党内では「パランティアは中立な事業者ではなく、米国の諜報機関や地政学的な利益と深く結び付いている」と警戒感が強い。
既に導入した南部バイエルン州では、ゴッサムを使った分析で犯罪と無関係な市民のデータが活用されるのは個人情報の取り扱いルールに反するとして、違憲訴訟が起こされた。原告の人権団体は米映画「バットマン」シリーズに登場する架空の犯罪都市の名前を挙げ、「バイエルンはゴッサム・シティではない」と訴えている。
【時事通信社】
〔写真説明〕米企業パランティア・テクノロジーズのロゴマーク=4月14日(EPA時事)
2025年08月01日 20時32分