日本全国に51校ある国立高等専門学校(国立高専)の人材を地方の再生に生かそうと、地元での起業を目指す高専の学生らにビジネス経験豊富な人材を紹介する取り組みが動きだした。各地の高専を運営する国立高等専門学校機構が7月、人材サービス会社のビズリーチ(東京)と連携協定を締結。同機構は今後5年間で、在学生による起業を全ての国立高専で実現することを目指す。
高専の学生は地元企業と交流しながら専門技術を学ぶため、少子高齢化やそれに伴う労働力・後継者不足など、地域が抱える課題に直接触れる機会が多い。こうした問題の解決を目指してベンチャー企業を立ち上げる学生も相次いでおり、卒業後の起業も含めると、2025年3月までの5年間で22の国立高専から37社が誕生している。
しかし、高専の学生は営業や経理といった経営面の実務経験に乏しいのが難点だ。ビズリーチとの連携では、290万人超が登録する同社の転職サイトを活用し、学生側が求める人材をマッチングする。同機構の谷口功理事長は「高専の活用は地域活性化のために重要な課題だ。多くの(専門家の)方々に助けて頂きたい」と期待する。
協定の第1弾として、光学式文字読み取り装置などの技術で地元企業を支援する「D―yorozu(ディーヨロズ、香川県三豊市)」が、ビズリーチを通じマーケティング責任者らの募集を始めた。香川高専在学中の23年に同社を立ち上げた柏原悠人さんは「われわれは技術で課題を解決できるが、費用対効果も考えて事業を波及させていくことは苦手。その計画を立ててくれる方に来てほしい」と話している。
【時事通信社】
〔写真説明〕撮影に応じる国立高等専門学校機構の谷口功理事長(中央)と「D―yorozu(ディーヨロズ)」を起業した柏原悠人さん(左)ら=7月29日、東京都渋谷区
2025年08月03日 07時17分