【パリ時事】フランスのルコルニュ首相は14日、下院で演説し、長期化している政局の混迷打開に向け、マクロン政権が2023年に強行導入した年金改革の停止を表明した。中道左派野党・社会党の要求を受け入れた。同党は「勝利だ」と歓迎。急進左派などが提出した内閣不信任決議案への同調を見送った。同案は否決される公算が大きくなり、解散・総選挙はひとまず遠のきそうだ。
12日に少数与党体制で発足した第2次ルコルニュ内閣が不信任を免れるには、社会党の協力が不可欠だった。同党は改革の「即時・完全な停止」を主張し、ルコルニュ氏は「改革を(27年の次期)大統領選まで停止する提案を行う」と明言した。約22億ユーロ(約3900億円)の歳出増大が見込まれるものの、財政赤字の拡大ではなく「節約で埋め合わせねばならない」と訴えた。
フランスでは昨夏の総選挙後、マクロン大統領の与党・中道連合が野党の極右、左派と反目。どの陣営も過半数に届かず、不安定な政局が続く。
ルコルニュ氏が左派のうち社会党の協力を維持できれば、内閣のかじ取りは安定に向かう可能性もある。ただ、同党は14日に閣議決定された緊縮型予算案に批判的で、今後の行方は不透明だ。
下院は16日に内閣不信任案を採決する。保守・共和党は11日に与党との連立を解消したが、不信任に同調しない方針。諸派議員の大多数も支持しない見込みで、可決に必要な過半数の賛成は集まらないとみられている。
年金改革は23~30年にかけ、法定の退職年齢を62歳から64歳に段階的に引き上げるのが主な内容。財政健全化を目指す政権の代表的な経済政策で、与党内には停止への反対論もある。一方、労組が100万人規模のデモを行って抗議するなど、国民には不人気だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕14日、パリで演説するフランスのルコルニュ首相(AFP時事)
2025年10月15日 13時01分