【エルサレム時事】パレスチナ自治区ガザ和平案の「第1段階」が発効して17日で1週間。イスラム組織ハマスによる人質の遺体返還が遅れる中、イスラエルは圧力をかけるため軍事作戦再開をちらつかせる。約2年に及ぶ激しい戦闘の末にたどり着いた停戦が早くも揺らいでいる。
トランプ米大統領が主導した和平案は、第1段階として、ハマスが拘束する人質全員を解放するよう定めた。ハマスは解放期限の13日に生存する人質全員を引き渡したが、死亡した人質28人のうち遺体を返還したのは一部にとどまる。別人の遺体も含まれるなど、混乱が生じている。
ハマスは15日の声明で、現状で返還可能な遺体はすべて引き渡したとして、合意の履行を主張。イスラエルの攻撃でガザががれきの山と化したため、残る遺体の収容には「多大な労力と特別な機器が必要だ」と訴えた。
遺体返還の遅れにより、停戦は不安定化に向かっている。イスラエルのカッツ国防相は「ハマスが合意履行を拒んだ場合、米国と協調して戦闘を再開する」と表明。ハマスを打ち負かすための「包括計画」の準備を軍に命じた。
第1段階の履行が不完全な中、ハマスの武装解除やガザの戦後統治などを定める「第2段階」の議論も進んでいない。イスラエル政府高官は地元メディアに「第1段階が完了してから、第2段階の協議を行う」と説明する。
トランプ氏は、ハマスが武装解除を拒否した場合、「イスラエルが(ガザの)街頭に戻り、ハマスをたたきのめすだろう」と述べ、ガザ再攻撃を容認する考えを表明した。
背景には、ハマスが「治安の空白を埋める」として、ガザの武力支配復活をもくろんでいることがあるとみられる。ハマス情報筋はロイター通信に対し、イスラエルの協力者や武装した略奪者らを許さないと強調。公開処刑の映像もSNSで拡散された。停戦後もイスラエル軍の攻撃で死者が出ており、ガザでは犠牲者の拡大が続いている。
【時事通信社】
〔写真説明〕15日、パレスチナ自治区ガザの南部ハンユニスに運び込まれる物資(EPA時事)
2025年10月17日 12時30分