【ワシントン時事】米国防総省とメディアの対立が鮮明になっている。同省が導入を決めた報道・取材規制の新ルールに対し、主要メディア各社は報道の自由の侵害だとして同意を拒否。トランプ政権がメディアに圧力を強める中、憲法で認められた報道の自由が制約される恐れが高まっている。
国防総省は9月19日付で、機密情報に当たらなくても、同省の許可なく報じたり、職員に情報提供を求めたりした場合は取材許可を取り消すと通告した。今月14日までに誓約書への署名を迫り、従わない場合は取材記者証の返納と庁舎からの立ち退きを求めた。
ヘグセス国防長官は14日、ホワイトハウスで記者団に「これは常識の問題だ。われわれは国家安全保障が守られるように努めている」と強弁。トランプ大統領も「報道機関全体が非常に不誠実だ」と述べ、ヘグセス氏に同調した。
しかし、米メディアによると、同意を表明したのは親トランプ派の極右系メディア「ワン・アメリカ・ニュース」だけで、それ以外の全社は署名を拒否した。ヘグセス氏がルール適用を強行すれば、国防総省に常駐する記者がほぼいなくなる。
ワシントン・ポスト紙のマレー編集主幹は声明で「提起された制限は報道の自由を侵害するものだ」と非難。ヘグセス氏が司会者を務めていたFOXニュースを含む5大テレビ局も共同声明で「この方針は前例がなく、ジャーナリズムの核心的な保護を脅かすものだ」と反発した。
トランプ氏はこれまでにも自らに批判的なテレビ局の放送免許取り消しを主張したほか、公共放送の予算も大幅に削減した。外国の報道関係者を対象としたビザ(査証)の有効期間の大幅短縮も打ち出すなど、メディアへの圧力を強めている。
ヘグセス氏は3月、米軍がイエメンの武装組織フーシ派を空爆した際、作戦内容を民間通信アプリのグループチャットに投稿していたことが報道で発覚した。それ以来、情報を漏えいした人物をあぶり出すために省内でうそ発見器を使うなど、神経質になっていると伝えられている。
【時事通信社】
〔写真説明〕ヘグセス米国防長官=14日、ワシントン(AFP時事)
2025年10月15日 20時31分