
【ワシントン時事】トランプ米大統領の核実験再開指示が米国内で波紋を広げている。ロシアや中国に核兵器の軍備管理を呼び掛けてきたトランプ氏が、1992年を最後に実施していない爆発を伴う核実験の再開を示唆し、政権内の人々ですら真意を測りかねているためだ。
トランプ氏は10月30日、中国の習近平国家主席との会談直前にSNSで核実験再開を国防総省に指示したと表明した。翌31日にも南部フロリダ州に向かう大統領専用機内で記者団から地下核実験を実施するのか問われ、「すぐに分かるだろう。いくつかの実験を行うつもりだ」と改めて強調。「他の国がやっているなら、われわれもやる」と説明し、ロシアや中国に対抗する姿勢を示した。
しかし、ロシアは旧ソ連時代の90年、中国も96年を最後に爆発を伴う核実験を行っていない。また、米国で核実験を行うのはトランプ氏が指示した国防総省ではなく、エネルギー省傘下の国家核安全保障局(NNSA)だ。NNSAの職員の大半は現在、政府機関の一部閉鎖で自宅待機となっていると伝えられている。
このため、米国内でもトランプ氏が主張している「核実験」は爆発を伴う核実験ではなく、核弾頭を搭載可能なミサイルなどの新兵器の試験を指しているのではないか、といぶかる向きもある。ロシアでは10月、プーチン大統領が核弾頭を搭載できる無人原子力潜水艇や原子力推進式巡航ミサイルの実験を行ったと発表した。
米軍で核戦力を担当する戦略軍の司令官に指名されたリチャード・コレル海軍中将は10月30日の上院軍事委員会の公聴会で、「大統領の発言が核実験を意味すると決め付けるつもりはない。中国もロシアも爆発を伴う核実験を行っていない」とかわした。
ヘグセス国防長官は同31日に訪問先のマレーシアで「核実験再開は責任あるやり方であり、核戦争の可能性を減らすだろう」と主張したが、具体的に何をするかは明示しなかった。議会調査局によると、米国では大統領の決定から36カ月以内に地下核実験を実施する能力を維持することが義務付けられている。
【時事通信社】
〔写真説明〕10月31日、米東部メリーランド州で、出発前の大統領専用機内で報道陣の取材に応じるトランプ大統領(AFP時事)
2025年11月01日 20時31分