
【ワシントン時事】4日投開票の米ニューヨーク市長選、南部バージニア、東部ニュージャージー両州知事選は民主党が全勝した。上下両院で少数派の民主党に弾みとなったものの、市長選で民主社会主義者を自称する左派候補が台頭したことで党内融和に懸念が残る結果となった。一方、トランプ政権には打撃で、来年11月の中間選挙に向け、共和党は立て直しが不可避な情勢だ。
ニューヨーク市長選で勝利したゾーラン・マムダニ氏は、家賃値上げ凍結や大企業・富裕層への増税など進歩的な政策を主張。党予備選まではほぼ無名だったが、SNSを駆使した選挙戦術で若年層を中心に急速に支持を広げた。
しかし、民主党は2024年大統領選で共和党のトランプ大統領に敗れて以降、党勢回復に向けた深刻な路線対立に直面する。市長選では、全米での支持離れの要因とされる左傾化を警戒した上院トップのシューマー院内総務ら党指導部がマムダニ氏と距離を置いたのに対し、党内急進左派の象徴的存在であるオカシオコルテス下院議員らは全面支援した。
2州の知事選では、党指導部が海軍ヘリコプターパイロットや中央情報局(CIA)職員の経歴を持つ中道派の候補を擁立。幅広い支持の取り込みに成功し、連勝につなげた。
ただ、それ以上に左派のマムダニ氏の存在感が際立ったことで、オカシオコルテス氏は「多様で新しい支持層をないがしろにすれば党が存続できない」と指導部の対応を批判。今後、党内左派の影響力が増す可能性があり、トランプ政権にどう対峙(たいじ)するか混迷は続くとの見方が広がる。
一方、トランプ氏はマムダニ氏を「狂った共産主義者」と批判し、ニューヨーク州のインフラ整備事業への資金拠出凍結などを警告している。左派の台頭を格好の材料に、「極左の民主党」とレッテル貼りした攻撃を一段と強めるとみられる。
とはいえ、トランプ政権内では2期目の「最初の審判」で有権者の不満が突き付けられた結果に危機感が漂う。ロイター通信が先月実施した調査では、中間選挙で重視する項目として「生活費対策」との回答が40%と最多で、「民主主義の規範」が28%で続いた。
いずれも今回の選挙で主要な争点だっただけに、政治専門紙ポリティコは「トランプ政権の政策に対する反発が高まっていることが強く示された」と指摘。共和党と政権は戦略の練り直しを迫られそうだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕米民主党のオカシオコルテス下院議員(左)とシューマー上院院内総務(EPA時事)
〔写真説明〕トランプ米大統領=2日、大統領専用機内(ロイター時事)
2025年11月06日 07時06分