トランプ氏、強権路線に拍車=中東で成果、経済不透明―米大統領選1年



【ワシントン時事】ドナルド・トランプ氏(79)が復権を果たした米大統領選から5日で1年。外交面で一定の成果を挙げる一方、「米国第一主義」に基づく高関税政策を推し進め、経済の見通しには不透明感が漂う。圧力をてこにした政治手法に拍車が掛かっており、強権路線が加速することへの懸念も広がる。

トランプ氏は「ピースメーカー(平和の構築者)」を自称し、世界各地で紛争の仲裁役を買って出ている。実績の一つは、パレスチナ自治区ガザを巡るイスラエルとイスラム組織ハマスとの2年間に及ぶ紛争を停戦に導いたことだ。自身が提示した和平案を受け入れなければ「地獄の報いを受ける」などと圧力をかけ、ハマスに連れ去られた人質のうち生存者全員の解放を実現した。

ただ、国民からの評価は必ずしも高くはない。政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、就任直後に5割を超えていたトランプ氏の支持率は、3日時点で43.7%。不支持率は53.6%に上り、人気は伸び悩んでいるのが現状だ。

背景には、人権軽視が指摘される移民税関捜査局(ICE)による強引な中南米系移民の摘発や、野党民主党の首長を頂く首都ワシントンやロサンゼルスへの治安悪化などを名目とした一方的な州兵派遣など、権威主義的な政権運営に対する懸念がある。先月の政権抗議デモ「NO

KINGS(王はいらない)」は全米2700カ所以上で行われ、参加者は約700万人に上った。

経済への不安感も根強い。共和党は大統領職と上下両院の過半議席を握る「トリプルレッド」の状況にもかかわらず、予算案を成立させられず約7年ぶりの政府閉鎖に陥った。長期化の影響は連邦職員の一部解雇や管制官不足による航空便遅延など広範囲に及ぶ。各国に課した相互関税に関しても、雇用環境の悪化やインフレ加速など、下振れリスクへの警戒感が増している。

「信任投票」となる中間選挙まで残り1年となった。共和党の現有議席は上下両院とも民主党と僅差。共和党に有利になるよう下院選挙区の区割りを恣意(しい)的に変更する「ゲリマンダー」を推進し、異例となる中間選挙前の共和党全国大会の開催を試みようとするのも焦りの裏返しとみられる。トリプルレッドの一角が崩れるようなことがあれば、トランプ氏の権威に陰りが出る可能性がありそうだ。

【時事通信社】 〔写真説明〕トランプ米大統領=9月30日、ワシントン(AFP時事)

2025年11月05日 07時03分


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