
【ワシントン時事】ディック・チェイニー元米副大統領が3日、肺炎と心臓・血管疾患の合併症で死去した。84歳だった。家族が4日の声明で発表した。湾岸戦争やアフガニスタン戦争、イラク戦争に関与。武力介入も辞さない強硬な対外政策を唱える共和党ネオコン(新保守派)の代表格だった。
退任後も共和党保守派に影響力を保った一方、トランプ大統領に対しては批判的だった。2024年大統領選では民主党候補のハリス前副大統領への支持を打ち出した。共和党下院議員を務めたリズ・チェイニー氏は娘。
1941年、中西部ネブラスカ州リンカーン生まれ。フォード大統領の首席補佐官を経て79年から西部ワイオミング州選出の連邦下院議員となり、共和党内で頭角を現した。89年にブッシュ(父)政権で国防長官に就き、湾岸戦争で米軍を中心とする多国籍軍を指揮した。
2001年にはブッシュ(子)政権で副大統領に就任。同年9月の米同時テロ以降、「対テロ戦」を主導した。アフガン・イラク開戦に深く関わり、絶大な影響力から「影の大統領」とも呼ばれた。ただ、イラクの大量破壊兵器を巡る誤情報問題では批判を浴びた。
30代後半からたびたび心臓発作を起こし、1988年にはバイパス手術、2012年には心臓移植手術を受けるなど、健康不安がつきまとった。また、在任中に発覚した中央情報局(CIA)工作員の実名漏えい事件では副大統領首席補佐官が起訴され、関与が取り沙汰された。
【時事通信社】
〔写真説明〕ディック・チェイニー元米副大統領=2009年6月、ワシントン(EPA時事)
2025年11月04日 22時02分