「武装闘争」か「政治的解決」か=パレスチナ元収監者、割れる見解



【カイロ時事】パレスチナ自治区ガザでは、先月の和平案「第1段階」合意によるイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦入り後も、対イスラエル武装闘争を続けるべきだと考える人と、対話を通じた政治的解決を進めるべきだと訴える人で意見が割れている。合意成立後、イスラエルの刑務所から釈放された元収監者に電話で話を聞いた。

イスラエルは10月13日、長期刑に服していたパレスチナ人250人と、2023年10月の大規模軍事作戦開始以降、ガザで拘束した約1700人を釈放した。収監期間中にイスラエルとの向き合い方を見詰め直した収監者は多い。

「武力で奪われたものは、武力でのみ取り返せる」。ガザ中部ブレイジのイマド・セラージさん(47)はこう語った。00年に始まった第2次インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)に共鳴したセラージさんは04年、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘムでイスラエル当局に拘束された。「イスラエル人の殺害に関与した」罪に問われた。

セラージさんは「パレスチナの占領解放が夢」で、拘束されるまで襲撃を繰り返したと振り返る。刑務所では日常的に虐待を受けたが、ガザでイスラエル軍の大規模作戦が始まった23年10月以降はさらに悪化し、生活は「地獄のようだった」と訴えた。

今年10月、西岸ではなく出身地のガザで釈放された。ガザは破壊し尽くされていたが、「それでも尊厳を持って生きようとする人々の意志」に驚かされ、パレスチナ人の権利を守ろうと決意を新たにした。平和的解決が望めなければ「占領終結には武力抵抗が必要だ。自己防衛だ」と語った。

一方、ガザ北部のアルアウダ病院の院長、アフメド・ムハンナさん(52)は、あくまで政治的解決を目指すべきだと強調する。ムハンナさんは23年12月、病院からの退避命令を拒否し、イスラエル軍に拘束された。「病院には重症患者が多く、退避できるわけがない」と抵抗した。

拘束後は尋問され、収容施設に移された。ムハンナさんは、イスラエル側は「医療従事者もハマスの一部と見なし、意図的に標的にした」と主張した。

釈放時、バスでガザに入った道中、がれきの山で立ち尽くすガザの子供たちの姿が目に入った。顔に張り付く悲しみの表情から「既に人の営みは残されていない」と将来を悲観したという。

ハマスによる奇襲がイスラエルの軍事作戦を招いたと指摘。報復が報復を生む中、「危機を乗り越えるには、どれだけ時間がかかろうとも政治的解決しかない」と述べた。

【時事通信社】 〔写真説明〕イスラエルが釈放したパレスチナ自治区ガザのイマド・セラージさん=10月17日、ガザ中部ブレイジ(セラージさんの親族提供・時事) 〔写真説明〕イスラエルが釈放したパレスチナ自治区ガザのアフメド・ムハンナさん(中央)=10月16日、ガザ中部ヌセイラト(関係者提供・時事)

2025年11月04日 18時01分


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