
【香港時事】台湾有事に関する高市早苗首相の発言を受け、中国政府は国民に日本への渡航自粛を呼び掛け、これに追随する形で中国の「一国二制度」下にある香港当局も市民に注意喚起した。ただ、親日家が多い香港人にとって日本は人気の旅行先。渡航のキャンセルは目立っておらず、市民からは「訪日意欲にあまり影響はない」との声が漏れる。
日本政府観光局(JNTO)によると、2024年の香港からの訪日客数は過去最多の268万人。香港の総人口は約750万人だが、国・地域別で韓国、中国、台湾、米国に次ぐ5位だった。
香港政府保安局は15日、日本に関する渡航情報を更新。根拠を示さず日本で中国人が襲撃される事件が増加傾向にあると主張し、渡航の際は警戒を強めるよう促したが、渡航自粛までは求めていない。
同局は現在、日本の渡航警戒レベルについて、東京電力福島第1原発の周辺地域だけを3段階で最も低い「黄色」に指定。他の地域は対象になっていない。
注意喚起を受け、香港の航空各社は予約変更などに柔軟に対応。ただ、旅行会社では、日本への団体ツアーに関する問い合わせが減ったものの、大量キャンセルは発生していないという。監督機関も訪日ツアーの販売を継続できると明確にしており、ツアーは通常通り催行されている。
「地震など身の危険を感じる場合には訪日意欲が下がる」(地元旅行大手)傾向があるとされる。しかし、日中の国同士の政治的対立に対しては、香港の住民は本土の住民に比べ心理的に距離感がある。渡航警戒レベルの引き上げや航空便の欠航などさらに強い措置が実施されない限り、大きな影響はないとの見方が多い。
「香港人なら気にしない」。30代香港人女性は訪日注意喚起についてこう明言する一方、「日本旅行禁止など事態が厳しくなる可能性もある」と今後の推移には不安ものぞかせた。40代香港人女性は「京都がやっと静かになると周囲は喜んでいる」と話し、中国人の訪日自粛による日本のオーバーツーリズム(観光公害)解消を期待する声が出ていると明かした。
【時事通信社】
〔写真説明〕香港で開催された秋季観光博覧会の「日本パビリオン」=9月27日
2025年11月23日 07時00分