
【北京時事】高市早苗首相の台湾有事に関する発言を巡り、中国が国際社会に向けて日本批判の宣伝工作を展開している。国際機関に加え、日本と領土問題を抱える韓国に働き掛けているが、中国の強硬姿勢に同調する動きはロシアなど一部の友好国に限られているもようだ。
「互いの核心的利益を断固として支持する」。南アフリカで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席するため同国を訪問した中国の李強首相は21日、ラマポーザ大統領との会談でこう強調した。習近平政権が「核心的利益の中の核心」と位置付ける台湾問題を念頭に、サミット議長国である南アの支持取り付けを狙った。
21日には中国の傅聡国連大使が、高市氏の発言撤回を訴える書簡をグテレス国連事務総長に送った。書簡では「日本が台湾情勢に武力介入すれば、侵略行為として自衛権を行使する」と威嚇。傅氏は18日の国連総会の会合でも「日本に安保理常任理事国入りを求める資格はない」と述べた。
中国国営中央テレビによると、国際原子力機関(IAEA)の中国代表は21日、高市氏が非核三原則の見直しを否定していないことについて理事会で問題提起し、「日本が再び軍国主義の道を歩もうとするなら、国際社会は決して許さない」と主張した。中国外務省や在外公館はX(旧ツイッター)で連日、同様の見解を広めようとしたり、高市氏の風刺画を出したりしている。
韓国と共同戦線を張ろうとする動きも見せる。中国外務省の毛寧報道局長は17日、島根県竹島(韓国名・独島)などの日本の立場を発信する「領土・主権展示館」(東京都)の施設拡張に絡み、「最近の日本の悪質な言動に周辺国は警戒している」と語った。同省が竹島問題にこうした形で言及するのは異例だ。
だが、韓国の反応は冷ややかだ。有力紙・中央日報は、日中関係が悪化する中で「(日韓の)歴史的対立を再燃させ、韓米日の協力関係を揺るがす意図があるようだ」と分析。韓国のネット上では、中韓の境界が定まっていない黄海における中国の威圧的行動を指摘する声も上がっている。
習政権は2023年、東京電力福島第1原発の処理水放出を巡り、今回と同様に日本をおとしめる国際世論形成を画策した。ただ、科学的根拠が欠落した中国の主張に賛意を示す国はほとんどなく、対日非難のキャンペーンは不調に終わった。
【時事通信社】
〔写真説明〕中国の李強首相(左)と南アフリカのラマポーザ大統領=22日、ヨハネスブルク(EPA時事)
2025年11月24日 07時59分