
【ワシントン時事】少女らの性的搾取で起訴され、勾留中に自殺した米富豪ジェフリー・エプスタイン氏を巡り、同氏と親交があったトランプ米大統領が関連文書を公開する法に署名した。自身の熱狂的支持層「MAGA(マガ)」議員らの開示要求に押し切られた形で、基盤にひずみが生じる事態になっている。
「大統領による憎悪に満ちた選挙に耐えなければならない状況にしたくない」。MAGA派の筆頭格グリーン下院議員は21日、議員辞職を表明。トランプ氏の意に反して文書公開に動き、対立が表面化していた。
トランプ氏は昨年の大統領選で文書を開示する意向を示したが、自身も買春に関与していた疑惑が取り沙汰されると姿勢を180度転換した。クリントン元大統領ら民主党関係者とエプスタイン氏のつながりを主張して矛先をそらし、公表を求める民主党を繰り返し批判。共和党議員に公開を阻止するよう働き掛けた。
しかし、グリーン氏が民主党と歩調を合わせて公開を後押しした。エリート層の「顧客リスト」が存在するとの疑念からだが、トランプ氏は怒りを募らせ「裏切り者」とグリーン氏を非難。来年の中間選挙で同氏に刺客を立てる方針を示唆した。結局、法律は議会を通過してトランプ氏の元に送付された。
現政権で身内がトランプ氏に逆らうのは極めて異例だが、グリーン氏は「裏切り者とは外国や自分自身に奉仕する人のことだ。愛国者は国や(被害に遭った)女性のような国民に奉仕する人のことだ」と反論。タイム誌(電子版)は、グリーン氏が2028年の次期大統領選への出馬を検討していると関係者に伝えたと報じた。政治専門紙ヒルによると、MAGA派女性議員の間でトランプ氏離反の動きが広がりつつある。
エプスタイン問題はトランプ氏の支持率にも響いているとみられる。ロイター通信が11月に実施した世論調査では、支持が2期目で最低となる38%に低下。中間選挙を前に求心力が鈍り始めている状況で、ワシントン・ポスト紙は「トランプ氏の指導力が試されている」と指摘した。
【時事通信社】
〔写真説明〕グリーン米下院議員(中央)=18日、ワシントン(AFP時事)
2025年11月24日 13時04分