
【イスタンブール時事】ウクライナが黒海を航行していたタンカーを攻撃し、周辺国が緊張激化への懸念を強めている。ウクライナは、制裁を回避してロシア産原油を運ぶ「影の船団」を攻撃したと主張し、ロシアは対抗措置を警告。戦火の拡大に発展しかねない状況だ。
黒海のトルコ沖では先月28日、タンカー2隻が攻撃を受け、ウクライナが保安局(SBU)による作戦だったと認めた。ウクライナ側は「ロシアの原油輸送に大きな打撃を与えた」と戦果を強調した。
これに対し、ロシアのプーチン大統領は今月2日、攻撃を「海賊行為」と非難。「最も根本的な選択肢は、ウクライナを海から遮断することだ」と述べ、ウクライナの黒海沿岸の港などに対する攻撃強化を示唆した。
ロシアとウクライナは3月に米国の仲介で、黒海の航行の安全確保や武力行使排除で合意した。世界有数の穀物生産国ウクライナにとって、主要な輸出ルートである黒海の安全航行は極めて重要で、海上輸送が滞れば戦時財政への影響は必至。それでも、東部戦線で劣勢に立たされていることを受け、ロシアの戦費調達の柱であるエネルギー関連施設や輸送手段に対する攻撃強化に踏み切らざるを得なかったとみられる。
黒海に面するトルコ、ルーマニア、ブルガリアの3カ国は3日、ブリュッセルで外相会談を開催。トルコのフィダン外相は「戦争の範囲やその手段が拡大している」と懸念を示した。ルーマニア国防省は同国東部沖の黒海を漂流していた水上ドローンを爆破処理したと発表した。
【時事通信社】
〔写真説明〕黒海で爆発・炎上するロシア産原油を運ぶ「影の船団」とされるタンカー=11月28日、トルコ・ボスポラス海峡(同国海上保安当局が同29日提供)(EPA時事)
2025年12月05日 12時40分