
【ワシントン時事】2期目就任から20日で1年を迎えるトランプ米大統領は、「米国第一」の外交政策を実現するため、米軍の強大な軍事力に頼る場面が増えている。限定的な対外介入をためらわず、「力の行使」で野心を成し遂げようとするトランプ氏の行動は、米主導で築いた国際秩序の根幹を揺るがしている。
◇制約は「道徳観」
「一つだけ存在する。私の道徳観だ。私の心だけが私を止めることができる」。トランプ氏は1月、米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューで自身の行動を制約するものは何かと問われ、こう答えてみせた。
「終わりなき戦争を終わらせる」と訴え、アフガニスタンやイラクで長く続いた戦争に徒労感を募らせた国民の支持を集め、トランプ氏は大統領へと上り詰めた。だが、2期目就任後は、イラン核施設空爆(昨年6月)や過激派組織を狙ったナイジェリア空爆(同12月)、ベネズエラ急襲(今年1月)など軍事介入を繰り返す。
1期目(2017~21年)でも、過激派組織「イスラム国」(IS)指導者やイラン革命防衛隊司令官の殺害などの軍事作戦は実行した。それでも、「戦争を食い止めるため」(トランプ氏)などと説明し、抑制的な対応だと取り繕っていた。
しかし、ベネズエラのマドゥロ大統領拘束作戦を米兵の死者を一人も出さずに成功させたことで自信を深めたもようだ。石油利権確保に向けて地上部隊派遣すら辞さない姿勢を鮮明にし、対外介入への「衝動」をむき出しにし始める。
◇消えた大人たち
1期目からの変化は何か。
第1次政権時、マティス元国防長官やケリー元大統領首席補佐官、ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障担当)ら外交・軍事分野での経験が豊富な「アダルト(大人)」と呼ばれる側近が脇を固め、トランプ氏の「歯止め役」を担っていた。
トランプ氏は2期目に入ると「忠誠心」にあつい閣僚や高官を登用し、同氏をいさめる側近はいなくなった。対外介入に慎重な抑制主義者とされるバンス副大統領も昨年6月のイラン空爆前、「直感を信じろと助言する」と述べ、トランプ氏の判断に異を唱えない姿勢を示した。
◇よみがえる砲艦外交
トランプ氏は、西半球への他国の干渉を拒む「モンロー主義」に自身の名前を重ねた「ドンロー主義」を引っさげ、デンマーク自治領グリーンランド領有に意欲を示す。イランで市民の抗議デモが激化すると「助けが向かっている」と述べ、南シナ海で展開していた空母を中東へ派遣。イラン再攻撃の構えも見せた。
「われわれは力、軍事力、権力によって支配された現実の世界で生きている」。ミラー大統領次席補佐官の発言はベネズエラ急襲後の政権内の雰囲気を如実に表す。トランプ氏も国際法を順守するかは「定義次第だ」と言い放ち、ルールに基づく国際秩序をあからさまに軽視する。
米エール大のオーナ・ハサウェイ教授(国際法)は「戦争が違法とされたことで完全に放棄された砲艦外交が再び姿を現した」と警鐘を鳴らしている。
【時事通信社】
〔写真説明〕トランプ米大統領=16日、ワシントン(EPA時事)
2026年01月20日 18時16分