乗客乗員520人が犠牲となった日航ジャンボ機墜落事故は12日、発生から40年を迎えた。墜落現場の「御巣鷹の尾根」(群馬県上野村)には遺族らが慰霊登山に訪れ、点在する墓標の前で亡き人をしのんだ。遺族が高齢化する中、事故を直接知らない子や孫世代も増え、「伝えていきたい」との声も聞かれた。
夫の孝之さん=当時(29)=を亡くした大阪府豊中市の小沢紀美さん(69)は、長男の秀明さん(39)と墓標に手を合わせ、「40年たったねえ…」と語り掛けた。紀美さんは「(御巣鷹は)昔は殺伐とした山だったが、受け止めてくれる山になった。安全を(祈る遺族らが)集う場所になった」と話した。
中学1年生で父昌憲さん=当時(39)=を亡くした経営者の辻俊多美さん(53)は「改めて山に登り、40年はあっという間だったと思う」と心境を語った。
俊多美さんは、父の死を受け入れるまで時間がかかり、当時の父と同じ年になって初めて慰霊登山を始めた。自身も子を育てる中で「父はやりたいことがいっぱいあっただろうと気付いた」。事故の風化を防ぐため「伝えていきたい」と思いを新たにした。
父謙二さん=当時(49)=を失った山本昌由さんと弟の康正さんは、ビデオ通話を通じて大阪府にいる母啓子さん(80)に慰霊登山の様子を届けた。登ることが難しくなったという啓子さんは「墓標を遠隔で見せてもらい、お供えした花を見られて大満足だ」とビデオ通話で語った。
墜落地点は標高約1565メートルの尾根。尾根に立つ「昇魂之碑」の前で、遺族らは故人へのメッセージを付けた風船を飛ばした。東日本大震災やエレベーター事故など、他の災害や事故の遺族らも参加し、鐘を鳴らして空の安全を誓った。日航によると、慰霊登山をしたのは82家族283人だった。
夜には麓の「慰霊の園」で、遺族や関係者が参列し、追悼慰霊式が営まれた。520本のろうそくがともされ、事故発生時刻の午後6時56分に全員で黙とうをささげた。
【時事通信社】
〔写真説明〕日航ジャンボ機墜落事故の現場にある「昇魂之碑」の前で手を合わせる小沢紀美さん(手前)ら=12日午前、群馬県上野村
〔写真説明〕日航ジャンボ機墜落事故の現場にある「昇魂之碑」の前で風船を飛ばし、犠牲者を弔う人ら=12日午前、群馬県上野村
〔写真説明〕ろうそく供養を終え、犠牲者の氏名が刻まれた碑を見詰める人たち=12日午後、群馬県上野村
〔写真説明〕日航機墜落事故の追悼慰霊式で事故発生時刻に黙とうする遺族ら=12日午後、群馬県上野村
2025年08月12日 21時15分