
【ソウル時事】アジア太平洋経済協力会議(APEC)の議長国を務めた韓国の李在明大統領は、日米中など主要国の首脳が一堂に会する機会を捉え、「実用外交」を展開した。米国との関税交渉を妥結に導き、中国との間ではぎくしゃくしていた関係の改善で一致。一定の成果を挙げたとの評価がある半面、トランプ米大統領の訪韓でにわかに期待が高まった米朝会談は実現しなかった。
「朝鮮半島の平和こそ、アジア太平洋地域繁栄の必須条件だ」。李氏は1日、APEC首脳会議閉幕に際し、南北間の緊張緩和や北朝鮮との対話再開に向けた協力を関係国に呼び掛けた。
韓国は、APEC首脳会議に合わせ訪韓した米中両首脳を国賓として厚遇。10月29日の米韓首脳会談では、対米投資を巡る意見の対立から難航していた関税交渉を妥結させ、「悲願」だった原子力潜水艦の建造をトランプ氏に認めさせた。
中韓関係は2017年の在韓米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備を機に冷え込んだが、両国首脳は今月1日の会談で、関係改善の方針を確認。貿易や農業など複数の分野で覚書を結んだ。
日本の高市早苗首相との初会談では、未来志向の協力関係を継続することで一致した。日米との連携を重視しつつ、中国やロシアとの関係を「管理」するという李政権の実用外交は、軌道に乗りつつある。
ただ、北朝鮮を再び対話の場に引き出すのは容易ではなさそうだ。李氏は「ペースメーカー(伴走者)」として米朝対話を支援する立場を示しているが、北朝鮮は韓国を「敵対国」と位置付ける。トランプ氏による会談の呼び掛けにも反応を示さなかった。
李氏はAPEC首脳会議閉幕後の記者会見で、韓国に対する北朝鮮の敵対的認識を改めさせるには「相当な努力が必要だ」と認めた。北朝鮮との対話再開に向けた道のりはなお険しく、李政権の手腕が問われるのはこれからだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕1日、韓国・慶州で記者会見に臨む李在明大統領(EPA時事)
2025年11月03日 07時12分