「和平機運消すな」=不安定なガザ停戦下、市民が声―イスラエル・パレスチナ共闘の動き



パレスチナ自治区ガザで停戦入り後も「合意違反」を主張してイスラエル軍が攻撃を繰り返す中、イスラエルとパレスチナ双方の市民から「和平の機運を消してはならない」と訴える声が出ている。提携関係にある双方の女性団体は、大きな被害が出たからこそ、機運が高まっていると指摘。市民が共闘することが将来の和平の土台になると信じている。

◇共存で「子供に平和を」

ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘム近郊で10月14日、2人の女性が再会し、「平和への道を共に歩むこと」を改めて誓った。1人はイスラエルの「平和に挑む女性(WWP)」代表のヤエル・アドミさん。もう1人はパレスチナの「太陽の女性(WOS)」代表のリーム・ハジャージラさんだ。

WWPは2014年のガザでの衝突を受けて設立された。約5万人のメンバーを抱えるイスラエル最大規模の平和活動団体だ。一方、WOSは21年に女性の経済、社会的自立を後押しするためにベツレヘムで誕生した。メンバーは約3000人で、西岸やガザで職業訓練などを行う。

両団体は22年、女性が参画し、平和構築と安全保障の確立を目指す共同指針「母の訴え」に署名、連携を本格化した。ハジャージラさんは「子供が平和に暮らす権利を保障したい。平和的共存しか道はない」と強調。イスラエルとパレスチナの市民が協力することで、暴力に代わる「対話による抜本的解決」の素地が生まれると意義を説明した。

◇「絶望の2年」の先に光明

しかし、現実は厳しい。両団体は23年10月、約1500人が参加する大規模集会を共催して和平を訴えたが、その3日後にはイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲が起き、イスラエルによる激しいガザ攻撃につながった。双方の市民に大きな被害が出て、両団体のメンバーも犠牲になった。先月10日の停戦発効まで、絶望の2年間だった。

アドミさんはハマスの奇襲以降、イスラエル社会は「憎しみや怒り、絶望や痛み」に満ち、「パレスチナ側の苦しみに共感することが困難になった」と指摘。ただ、イスラエル軍はガザで2年間激しい軍事作戦を続けたにもかかわらず、ネタニヤフ首相が目標に掲げた「ハマス壊滅」を果たすことはできなかった。こうした状況の下で、国民の間で「武力は解決策ではないとの理解が深まってきた」という。

パレスチナ側も同様だ。イスラエルへの敵対心は根強いが、戦時下で市民の犠牲者が拡大の一途をたどるにつれ、WOSへの参加者は増加。ハジャージラさんは「以前にも増して人々は平和こそが必要だと考えている」と語った。(エルサレム時事)。

【時事通信社】 〔写真説明〕オンラインでインタビューに答えるイスラエルの市民団体「平和に挑む女性(WWP)」代表のヤエル・アドミさん=10月16日 〔写真説明〕ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘムでインタビューに答える市民団体「太陽の女性(WOS)」代表のリーム・ハジャージラさん=10月14日

2025年11月04日 07時05分


関連記事

政治・行政ニュース

社会・経済ニュース

スポーツニュース