
【ニューデリー時事】バングラデシュの特別法廷が、昨夏の反政府デモに加わった学生の殺害に関与した「人道に対する罪」でハシナ前首相に死刑を言い渡してから24日で1週間。ハシナ氏の逃亡先である隣国インドは身柄引き渡しに消極的で、両国が駆け引きを繰り広げている。
「有罪判決を受けた個人を他国が保護することは重大な非友好的行為だ」。17日の判決後、バングラデシュ外務省は声明でそう強調。ハシナ氏や同じく死刑判決を受けた元内相の送還を改めて要請した。
これに対しインド外務省は、バングラデシュの平和や安定のため「全ての関係者と最後まで建設的な協議を行う」と、曖昧な声明でかわした。
両国関係に詳しいジャーナリストのシアム・サロワル・ジャミル氏は、インドにとって「非常に敏感な問題だ」と指摘する。インドはハシナ氏と長く緊密な関係にあった上、国際社会からは死刑判決の正当性を疑問視する声が上がっている。インドが身柄を引き渡せば、人命軽視の印象を世界に与えかねないため、ハシナ氏を国内にとどめ、外交カードとして使おうという意図があるとジャミル氏は推察する。
ハシナ氏はデモを受け昨年8月に事実上亡命して以来、公の場に姿を見せていない。米国に住む息子で、同氏の顧問を務めたサジーブ・ワゼド氏によれば、ハシナ氏はインド政府の保護下、自ら率いた前与党幹部らと電話したり、料理したりして過ごしているという。
ワゼド氏は「暫定政権は裁判手続き迅速化のため法改正したが、法律を扱う議会は今存在しない」などと判決の違法性を主張。「いかなる引き渡しも合法的な政府が存在し、正当な手続きに従っていなければならない。今回はいずれの条件も満たしておらず、インドに法的義務はない」と訴えた。
一方、暫定政権は引き渡し実現のため、国際刑事警察機構(ICPO)に支援を求める構えを見せている。
【時事通信社】
〔写真説明〕バングラデシュのハシナ前首相(左)とインドのモディ首相=2024年6月、ニューデリー(AFP時事)
2025年11月25日 07時05分