
はやぶさ2によるトリフネの通過観測(フライバイ)は、小惑星衝突による災害を防ぐ「プラネタリー・ディフェンス」(地球防衛)の観点から、重要な技術的知見を得る機会となる。
はやぶさ2が最終目的とする「1998
KY26」をはじめ、潜在的に地球衝突の可能性がある小惑星は約4万2000個見つかっている。約6600万年前に恐竜を絶滅させた直径10キロ超の小惑星はほぼ発見済みだが、都市規模の被害をもたらす同1キロ以下は未発見が多い。
衝突の恐れがある小惑星が発見された場合、早期に接近観測し、その特徴や組成などを調べる必要がある。軌道を変更させるには、対象の小惑星に探査機を衝突させる精密な誘導技術が必要となる。
はやぶさ2は本来、小惑星「りゅうぐう」近辺に滞在して観測(ランデブー)する探査機で、高速フライバイを想定した機体ではない。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の運用チームはフライバイを運用するためのソフトウエアを追加で開発し、シミュレーターによる検証で最接近時の誤差を100~150メートルの範囲に収めることに成功。小惑星表面から数百メートルという「すれすれ」(三桝裕也・はやぶさ2拡張ミッションチーム長)を狙うことが可能になった。
JAXAは2024年4月、プラネタリーディフェンスチームを発足。観測による早期発見や、米航空宇宙局(NASA)などとの協力も進める。
28年度には、欧州宇宙機関(ESA)とともに29年4月に地球に最接近する小惑星「アポフィス」(推定約340メートル)の探査を計画。フライバイを行うJAXAの「デスティニー・プラス」と、ランデブー観測するESAの「ラムセス」の2機をH3ロケットで打ち上げる。
吉川真・同チーム長は「地震や噴火と違い、天体衝突は早めに見つけられれば、いつどこにぶつかるか分かり、回避できる。一つの自然災害として、それを防ぐ活動を世界で協力して進めたい」と話している。
【時事通信社】
〔写真説明〕2029年4月に地球に最接近する小惑星「アポフィス」を探査する宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「デスティニー・プラス」(左)と、欧州宇宙機関(ESA)の「ラムセス」(右)のイメージ図(JAXA提供)
2026年07月06日 07時53分