待ちわびた再会かなわず=ハマス拘束のネパール人男性―仲間救い犠牲に



【ニューデリー時事】パレスチナ自治区ガザの和平合意に基づき、イスラム組織ハマスは20人の生存する人質全員と、拘束中に亡くなった人質の遺体を13日にイスラエルに引き渡した。遺体には、22歳の時に拉致されたネパール人学生ビピン・ジョシさんが含まれていた。2年間待ちわびていた家族は悲嘆に暮れている。

「解放の最後の瞬間まで生きて帰ってくることを願っていた」。ビピンさんのいとこ、キショル・チャンドラ・ジョシさん(29)は涙声でそう語った。

ネパール西部の大学で農業を学んでいたビピンさんは2023年9月、農業研修プログラムに参加するためイスラエルに渡った。渡航から約3週間後、研修先のキブツ(集団農場)がハマスの奇襲を受け、拉致された。

ハマスが今月13日に引き渡したビピンさんの遺体は、DNA型鑑定で本人と確認された。拉致から数カ月以内に殺害されたとの情報もあるが、詳しい状況は不明だ。

家族はこの2年、早期救出を求め関係国に働き掛けてきた。キショルさんは「弟同然」というビピンさんの死を受け入れられずにいる。「なぜハマスは何もしていない弟を殺したのか」と憤った。

同じキブツにいたネパール人学生ダナ・バハドル・チョードリーさん(27)によれば、ビピンさんは襲撃を受けた際、投げ込まれた手りゅう弾を素手でつかんで投げ、そばにいた仲間を救った。現場にいた2人を含む計17人のネパール人学生のうち10人が殺害され、ビピンさんだけが拘束された。

「ビピンがいなかったら生きて戻ることはできなかった」。感謝する半面、自身は生還したことで自責の念に駆られる。「彼はみんなの良い友人だった。今はできる限り家族を支えることが私たちの役目だ」と話した。

【時事通信社】 〔写真説明〕イスラム組織ハマスに拉致され、亡くなったビピン・ジョシさん=2023年8月、ネパール西部ティカプル(いとこのキショル・チャンドラ・ジョシさん提供・時事) 〔写真説明〕イスラム組織ハマスに拉致され、亡くなったネパール人学生ビピン・ジョシさんを悼む人々=15日、カトマンズ

2025年10月18日 14時30分


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