【ワシントン時事】米ワシントンで17日に行われた米ウクライナ首脳会談で、トランプ米大統領は巡航ミサイル「トマホーク」の供与を求めたウクライナのゼレンスキー大統領に言質を与えなかった。トランプ氏はウクライナ侵略の終結を目指し、ロシアのプーチン大統領と対面会談に臨む考えで、ロシアを現時点で刺激するのは得策ではないと判断したとみられる。
ゼレンスキー氏は9月にトランプ氏と会談した際、トマホークの提供を要請。トランプ氏もSNSでロシアを「張り子の虎」とやゆし、ウクライナに反転攻勢を呼び掛けた。同氏は今月12日には、「トマホークが自分たちの方向に飛んでくることをロシア人は望むだろうか?この戦争が解決しなければトマホークを送り込むと伝える」と述べ、ロシアへのけん制を強めた。
トランプ氏がロシア側の呼び掛けでプーチン氏と電話会談し、対面での再会談で一致したのは、この4日後。17日にホワイトハウスで向き合ったゼレンスキー氏に対し、一転して「トマホークは米国にも必要だ」「戦争の激化につながる」と供与に慎重な言葉を連ね、戦争が終わってトマホークが不要になるのが望ましいと主張した。
3週間強で2度も米国に足を運んだゼレンスキー氏にとっては、冷や水を浴びせられた形だ。米ニュースサイト「アクシオス」によると、ハンガリーで再会談することで米ロ首脳が合意したとの一報をゼレンスキー氏が聞いたのは、16日の米国到着時。関係筋は翌日の米ウクライナ首脳会談の様子について「誰も声を荒らげはしなかったが、トランプ氏は強硬だった」と説明した。
もっとも、トマホーク供与が直ちに現地の戦局に大きな影響を及ぼすとみる専門家は少ない。マーク・モンゴメリー米海軍退役少将によると、トマホークのウクライナ配備には最低でも半年を要し、数も「恐らく100発程度」にとどまる。モスクワを射程に収めるトマホークの供与をちらつかせたのは、ロシアへの心理的圧力の強化が主な目的で、当初から「軍事問題というより政治的問題」(モンゴメリー氏)という側面があった。
トランプ氏としては、ウクライナへの長距離ミサイル供与という手札を残したとも言える。ワシントン・ポスト紙は社説で、「一連の圧力の狙いはロシアに壊滅的一撃を加えることではなく、プーチン氏を交渉のテーブルに引き出し、合意をまとめさせることにある」とトランプ氏の意図を推測した。
【時事通信社】
〔写真説明〕17日、ホワイトハウスでトランプ米大統領との会談に臨むウクライナのゼレンスキー大統領(AFP時事)
2025年10月19日 07時04分