米中、首脳会談へ駆け引き激化=レアアースや関税武器に応酬



【北京時事】米中が今月下旬の首脳会談へ向けた駆け引きを激化させている。中国が市場を独占するレアアース(希土類)の供給を絞ることで米国に圧力をかければ、トランプ米政権は関税の大幅引き上げを掲げて応酬。自国優位の会談に持ち込みたい米中の「チキンレース」が続いている。

米中間の直近の摩擦は、中国政府が9日、レアアースの輸出規制強化を発表したのをきっかけにエスカレートした。習近平政権は今春にも規制策を講じているが、今回は採掘や製錬に関わる技術の流出阻止に重点を置く。海外で生産された製品であっても、中国製レアアースをわずかでも含んでいれば、輸出時に中国政府の許可取得を義務付けるという厳格な規定も含む。

トランプ大統領は10日、「(中国が)敵対的になりつつある」として、11月から100%の追加関税を課す意向を表明した。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて調整していた習国家主席との会談についても、中止を示唆した。

14日には、米中両国が相手国の船舶に対する入港手数料の徴収を開始。トランプ氏は、中国が米国産大豆を買い控えていることへの報復として、食用油の取引停止を検討していると明らかにした。

中国側は、米国が9月の貿易協議後「20日余りで20もの対中抑圧策を打ち出した」(商務省報道官)と主張しており、あくまでも正当な対抗措置を取っているとの立場だ。今月20日に始まる共産党の重要会議「第20期中央委員会第4回総会(4中総会)」を前に、対外的に「弱腰」と見られる動きはしにくいという事情もありそうだ。

トランプ氏はその後、習氏との対面に再び意欲を示しているが、中国側は会談実現に関して一度も言及しておらず、米側の出方を直前まで見極めるとみられる。

中国によるレアアースの「武器化」は、もろ刃の剣でもある。9日の規制発表後、欧州連合(EU)は、米国をはじめとする先進7カ国(G7)との連携を模索。15日にワシントンで開かれたG7財務相・中央銀行総裁会議でも危機感が示され、ベセント米財務長官は、オーストラリアやインドとも協力する方針を示した。

習政権は、国際協調に後ろ向きなトランプ政権の動向を好機と捉え、欧州などとの関係強化に努めてきた。ところが、輸出規制が米国以外にも波紋を広げたことで、西側諸国の「対中共闘」を促す結果となりつつある。

【時事通信社】 〔写真説明〕トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席(AFP時事)

2025年10月19日 07時06分


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