中国、北極圏へ進出加速=ロシアと連携し新航路



【北京時事】中国の習近平政権が北極圏への進出を加速させている。最大の北極圏国であるロシアをパートナーとし、資源開発や安全保障面で結び付きを強化。中国から北極海経由で欧州へ至る貨物航路の開通も宣言し、じわじわと影響力を拡大している。

「国際海運ルートとしての北極海航路の競争力を向上させる」。11月上旬、中ロ両国首相の会談後に発表されたコミュニケにはそう明記された。

習政権は2017年以降、巨大経済圏構想「一帯一路」の一環として、ロシアと共に「氷上シルクロード」建設に取り組んできた。不安定な中東情勢に左右されず、友好国であるロシア沖を通る同航路は、安保面でも価値がある。

今年9月23日に浙江省寧波を出港した中国のコンテナ船は北極海を横断し、20日間で英フェリクストウに到着した。当初予定より2日遅れたものの、スエズ運河を抜けて地中海を通る従来の南回り航路で約40日かかっていた欧州への輸送期間が「半分になった」と宣伝した。

航行に当たっては、原子力砕氷船を運用するロシア国営会社ロスアトムの傘下企業が、航路情報の提供などで全面協力した。

中ロ両国は10月に黒竜江省で行った政府間会合で、北極海航路の商業利用を加速させていく方針を確認した。中国は26年にも北極海を夏季の定期航路として活用したい考えだ。

ロシアによるウクライナ侵攻後、西側諸国がロシアと距離を置いたことで、中ロ連携の強度は増している。中ロ海軍は22、23年に米アラスカ州沖で合同パトロールを実施。24年には中国海警局の船舶が初めて北極海に入り、ロシア国境警備隊と共同航行した。両国は今後、シーレーン(海上交通路)の保護などを名目とした軍事・安保連携を拡大していくとみられる。

ただ、中ロの「蜜月」の先行きは不透明だ。ノルウェーの極北物流センター(CHNL)によると、北極海を通るトランジット貨物の95%はロシアから中国向けで、うち約6割を原油が占める。

習政権はロシア産原油や天然ガスの購入を通じ、侵攻を経済的に支えてきた。このため、プーチン政権は、自国の勢力圏である北極海や中央アジアなどへの中国の進出に対して「不信感を抱きつつも譲歩せざるを得ない立場」(北京の識者)に置かれている。ウクライナ侵攻が終結した後も、中国優位の協力関係が続くかは見通せない。

【時事通信社】 〔写真説明〕中国の習近平国家主席=12日、北京(EPA時事)

2025年11月16日 19時02分


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