
【サンパウロ時事】南米チリで16日、任期満了に伴う大統領選の投票が始まった。即日開票される。治安や移民を巡る政策が主要な争点。事実上、ボリッチ大統領の後継として立候補した与党左派連合のジャネッテ・ハラ前労働・社会保障相(51)に右派の主要3候補が挑む構図で、同日深夜(日本時間17日午前)にも大勢が判明する。どの候補も当選に必要な過半数票を得るのは困難とみられ、決着は12月14日の決選投票に持ち越されそうだ。
チリでは大統領の連続再選が禁じられ、任期は4年。政治や経済が安定した同国は「南米の優等生」と呼ばれてきた。しかし、近年は組織犯罪が横行。政情が不安定なベネズエラからの移民の大量流入もあり、現政権の寛容な対応に不満が高まっている。
選挙には8人が立候補した。世論調査会社CADEMによると、支持率27%のハラ氏と20%の右派ホセアントニオ・カスト元下院議員(59)が競り合っている。14%の極右ヨハネス・カイセル下院議員(49)、13%の中道右派エベリン・マテイ元労働・社会保障相(72)が続く。
ハラ氏は共産党に所属しており、与党連合内の予備選では圧勝。ただ、現政権が国民に不人気な上、共産主義に対する抵抗感も根強く、勢いに欠ける。
一方、前回大統領選で決選投票に残ったカスト氏は、移民流入対策としてボリビアやペルーと接する北部国境に壁を建設すると主張。カイセル氏は死刑復活や対ボリビア国境閉鎖などの公約を並べ、選挙終盤で支持を伸ばした。刑務所増設を訴えるマテイ氏は、中道左派からも支持を得ている。
今回の大統領選は、再導入された義務投票制の下で実施され、浮動票の行方が結果を左右しそうだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕チリ大統領選候補者のジャネッテ・ハラ氏(左)とホセアントニオ・カスト氏(AFP時事)
2025年11月16日 20時16分