旧日本兵遺骨、帰還めど立たず=ミャンマーで内戦激化―邦人活動で発見



【バンコク時事】第2次大戦中、「インパール作戦」の退却路や激戦地となり、約13万7000人の旧日本軍兵士が命を落としたミャンマー(旧ビルマ)で、ある日本人が現地スタッフと協力して遺骨調査に取り組んでいる。しかし、2021年の軍事クーデター以降は国軍と抵抗勢力の内戦が激化し、見つかった遺骨の帰還はめどが立っていない。

◇「遺骨収集は天命」

日本ミャンマー未来会議代表の井本勝幸さん(60)=福岡市東区箱崎出身=は12年、約4万5000人の遺骨が眠るミャンマーで調査を始めた。同時期に、対立するミャンマー政府と複数の少数民族武装勢力との和平実現に奔走していた井本さんに対し、少数民族側が各地に残る日本兵の遺骨の存在を伝え、収集への協力を申し出たことがきっかけだった。

「遺骨収集に携わることは自分の天命だと思った」という井本さん。各地に計12の調査隊を結成し、大戦時の状況を知る現地の古老らに話を聞くなどして遺骨の場所を特定していった。

オンラインで取材に応じた北西部チン州の調査隊員で、少数民族ゾミ族の男性タンネンムーンさん(42)は「戦時中、地域に滞在した日本軍の兵士と住民の間には友情が育まれたと聞いている。時がたって改めて日本人と働くことができ、地元の人間としてうれしい」と話した。

これまでに各地で発見されたり、埋葬地とみられる場所が判明したりした遺骨に関する情報は約150件。日本の厚生労働省や遺骨収集事業を受託している日本戦没者遺骨収集推進協会に報告され、18年度までにチン州や北東部シャン州などで見つかった約60柱が日本に帰還した。

◇遺骨、埋め戻しも

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に加え、21年のクーデターで井本さんはミャンマーに入国できなくなった。現地メンバーは調査を続けているが、各地で民主派や一部少数民族側への国軍の空爆が激しくなるなどし、見つけた遺骨は戦闘による焼失などを防ぐため、容器に入れて地中に埋め戻すケースもあるという。

日本戦没者遺骨収集推進協会はクーデター以降もミャンマーで現地調査を実施している。しかし、活動は情勢が安定している中部バゴー地域に限られ、井本さんが情報提供した場所などには行けず、遺骨の収集ができない状況が続いている。

内戦終結の見通しが立たない中で、タンネンムーンさんは「戦後80年が経過し、事情を知る古老が亡くなったり遺骨が溶けたりして発見が難しくなっているので、できるだけ早く調査を進めたい。すべての武装組織は和平に向けた話し合いをすべきだ」と訴える。井本さんは「これまでの活動でも困難な時期はあった。現地のメンバーの気持ちを励みにすべての遺骨帰還に向けて決して諦めない」と力を込めた。

【時事通信社】 〔写真説明〕ミャンマー北西部チン州で見つかった旧日本兵のものと推定される遺骨(タンネンムーンさん提供・時事) 〔写真説明〕取材に応じる日本ミャンマー未来会議代表の井本勝幸さん=6月27日、バンコク 〔写真説明〕オンライン取材に応じるミャンマーの少数民族ゾミ族のタンネンムーンさん=7月16日

2025年08月16日 07時11分


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